中大兄皇子の歌に隠された愛憎劇!額田王を奪った真相と百人一首の裏側を徹底解剖
中大兄皇子の代表作として名高いのが、『万葉集』巻一(中大兄近江宮御宇天皇代)に収められた大和三山をめぐる長歌です。
「香具山は 畝傍ををしと 耳成と 相あらそひき 神代より かくにあるらし 古昔も 然にあれこそ うつせみも 嬬をあらそふらしき」
大和三山のうち、香具山(男山)が畝傍山(女山)を愛おしいと思い、耳成山(男山)と激しく争ったという伝承を詠み込んだこの歌は、長きにわたり「中大兄皇子と大海人皇子が額田王を奪い合った三つ巴の愛憎劇を比喩したものだ」と解釈されてきました。弟・大海人の妻であった額田王を兄の中大兄が強引に召し上げた事件の暗喩とする見方です。
しかし、近年の古代文学研究では異なる解釈が主流を占めています。この歌は、大和の土地を鎮める「国見」の儀礼において、太古の神話的事象を引き合いに出し、大地を言向け和(やわ)すための公的な祝詞歌だったという説です。私的な色恋を雄大な自然に託したのか、それとも大君としての霊威を示す儀式歌だったのか。二つの解釈の間で揺れ動く神秘性こそが、この歌を歴史的傑作に仕立て上げています。
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