道の駅中山盆地の温泉はなぜ城の形?高山温泉ふれあいプラザの魅力を徹底検証
初めて道の駅中山盆地を訪れたドライバーの多くが、駐車場に車を停めた瞬間に「なぜ農村の真ん中にヨーロッパの城があるのか?」と首をかしげます。周囲には田んぼと畑が広がり、夏から秋にかけては「田んぼアート」が楽しめる純和風のロケーションです。その中心にそびえる三角屋根の尖塔と石造り風のファサードは、一見するとテーマパークの入り口のようにも映ります。
このユニークな建築デザインの背景には、群馬県高山村が1990年代から推進してきた独自の観光・地域振興ビジョンが存在します。高山村には1993年、スコットランドから移築・復元された本物の古城「大理石村ロックハート城」がオープンし、ドラマや映画のロケ地として全国的な知名度を獲得しました。さらに1999年には、国内屈指の規模を誇る「県立ぐんま天文台」が村内に開館しています。
つまり、村の象徴となった「ヨーロッパの古城(ロックハート城)」と「宇宙・星空(ぐんま天文台)」という2つの強力な観光資源を、村の玄関口である道の駅にもシームレスに反映させた結果、あの古城風の「高山温泉ふれあいプラザ」が誕生したのです。
「光環境条例」が守る奇跡の星空と、地域ブランディングの結晶
高山村の徹底したこだわりは、建物のデザインだけではありません。同村は全国でも珍しい「光環境条例(高山村光環境条例)」を制定している自治体です。ぐんま天文台での天体観測環境を守るため、村内の街灯や施設の屋外照明には、夜空へ光が漏れないような角度制限や遮光シェードの設置が義務付けられています。
地域観光政策や地方創生の観点から見ても、高山村のアプローチは非常に理にかなっています。平成のふるさと創生事業以降、全国各地で「ハコモノ行政」による奇抜な公共施設が乱立し、その多くが維持費の重荷から閉鎖に追い込まれました。しかし、道の駅中山盆地は「ロックハート城で中世ヨーロッパの世界観に浸り、ぐんま天文台で宇宙を学び、夜はふれあいプラザの露天風呂から遮るもののない満天の星空を仰ぐ」という一貫したストーリー(観光動線)を見事に構築しています。この明確なコンセプトがあるからこそ、単なる奇抜な建築で終わらず、開業から現在に至るまで多くのリピーターを惹きつけているのです。